9月24日の素話(海の水が塩辛いのはなぜ?)

むかしむかし、ある村に貧乏な男がいました。ある日の晩、その男のところへ白いひげのおじいさんがやってきました。

「道に迷ったので、一晩泊めてくれませんか?」
「ああ、それはお困りでしょう。いいですとも。さあどうぞ」

男は親切に、おじいさんを泊めてやりました。

次の日の朝、おじいさんは男に小さな石うすをくれました。

「一晩泊めてもらったお礼に不思議な石うすをあげましょう。右へ回せば欲しい物が出て、左へ回せば止まります。止めないといつまでも出続けるから気をつけて使ってくださいね。」

おじいさんはそう言って、出て行きました。

男はためしに、「米出ろ、米出ろ、ゴリゴリゴリ」と石うすを右回しに回してみました。すると石うすから、まっ白い米がザクザクと出てきました。驚いた男は慌てて左に回して止めました。

「じゃあ、米じゃなくても出てくるんだろうか?魚出ろ、魚出ろ、ゴリゴリゴリ」と右回しに回してみたところ、ピチピチした魚が沢山飛び出してきました。これまた驚いた男は慌てて左に回して止めました。

これはすごい!と喜んだ男は「お金も出るんだろうか、お金出てこい、お金出てこい、ゴリゴリゴリ」と回してみると、ジャラジャラジャラとたくさんのお金が出てきました。

男はこんな素晴らしいものを独り占めしてはいけないと思い、近くの人にお米やお魚やお金を分けてあげました。

さて、男の隣に、欲張りな兄さんが住んでいました。この兄さんは弟が急にお金持ちになったのを不思議に思い、弟の家をこっそり覗いてみたところ、石うすを回してお米やお魚やお金を生み出している様子を見つけました。

「そうか、なるほど。全ては、あの石うすのおかげだな。しめしめ」兄さんは夜になると弟の家に忍び込んで、石うすを盗みました。そして舟にのって、海へ逃げました。

「よしよし、ここまで来れば大丈夫だろう」兄さんは一生懸命に舟をこいだので、お腹がペコペコになりました。そこで、持ってきたおにぎりを取り出すと、「そうだ、塩をつけて食べると、きっとうまいだろう。よーし、塩出ろ、塩出ろ」と、石うすを回すと、石うすからは塩がザラザラとあふれ出して、たちまち舟いっぱいになりました。

欲張り兄さんは石うすから物を出す方法は見ていたのですが、止め方は見ていなかったのです。ついに舟は塩の重さに耐えられなくなり、そのまま海に沈んでしまいました。

ところであの石うすは、今でもグルグルと回って塩を出しています。海の水がしょっぱいのは、こういうわけなのです。

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