素話(すばなし)が始まりました

今日から素話が始まりました。

前園長のときから続いていて、私も頑張ってお話をしていこうと思い、色々とお話や民話、昔話の本を読んでみました。

素話は絵本も使わず、目の前で語られる言葉だけから子どもたちがイメージを膨らませていくものです。目から入る刺激は話している私の表情だけしかありません。
一方で、子どもたちは言葉から頭の中に少しずつイメージを膨らませていき、そのイメージが生き生きと動き出すようになっていく、というのが望ましい形です。

今回はじめて素話をしてみたのですが、子どもたちに助けられてなんとか出来たように思います。次からはできるだけ子どもたちがイメージをふくらませることが出来るようにお話を選んだり語り方を工夫したりしてみたいと思います。

 

今日のお話

同じお話を何度も何度も繰り返して聞かせることはとても良いことです。もちろん一言一句同じように話す必要はなく、大まかなストーリーが変わらないのであればその時々で適当に加工しても問題ないと思います。

ストーリーも多少違っていても個人的には問題ないと思います。

それよりも、お話を聞いたこと、また、お話をしてくれる人が目の前にいたことのほうが子どもたちの心に大切なものが残っていくと思っています。

素話をした日にはできるだけ素話の台本を園長コラムにも上げていこうと思っています。

難しいかもしれませんが、ぜひご家庭でも子どもたちにお話をしてあげればと思います。

 

ありんこと夢(すみれグループ)

ある春の暖かい日に、山で二人の男が働いていたんだ。一人の男は何でもおおざっぱで、人にぶつかっても物を壊してもなんにも気にしない乱暴な男だったんだ。もう一人の男はものを大切にして、仕事も丁寧にする男だったんだ。

仕事が終わってお昼ご飯を食べた後だったから、お腹もいっぱいになっていておひさまがポカポカしていてとっても気持ちが良かったんだ。すると乱暴な男はすぐにすぅ~すぅ~と寝息を立てて寝てしまったんだ。丁寧な男はなんとなく空を眺めてみたり、風が吹くのを見ていて寝なかったんだ。

丁寧な男が何の気無く隣で寝ている乱暴な男を見ていると、乱暴な男の鼻の穴からアリンコが1匹出てきたんだ。

「はて、鼻の穴からアリンコが出てきたぞ」

どう考えてもおかしい。いつの間にかアリンコが鼻の奥に入り込んでいて、いま出てきたのかなぁと思ってじっと見ていたんだって。

するとアリンコは鼻の中から這い出してきて辺りを見ていたんだけど、スルスルと寝ている男の首から胸へ、胸からお腹へ、お腹から地面へとどんどん降りていったんだ。

「はは、アリンコは自分の家に帰るんだな」と丁寧な男がそう思っていると、アリンコは一本の猫じゃらしをスルスルと登り始めたんだ。

登って登って、アリンコは猫じゃらしのてっぺんにたどり着いたんだけど、風が吹いてきて猫じゃらしはあっちにゆらーん、こっちにゆらーんと揺れるから、アリンコも一緒にあっちにゆらーん、こっちにゆらーんと揺れていたんだ。アリンコはそれが怖かったみたいで、目をまんまるにして猫じゃらしに必死にしがみついていたんだ。

アリンコはしばらく揺れる猫じゃらしに掴まっていたんだけど、ようやく覚悟を決めてゆらゆら揺れる猫じゃらしから降りて、眠っている男の体によじ登って、元の鼻の穴に潜り込んだんだ。すると、眠っていた乱暴な男がぱっと目を覚まして

「今とっても怖い夢をみた」というので、「どんな夢だったんだい?」と聞くと、「でっかい杉の木のてっぺんまで登って行ったら、風に吹かれてあっちへゆらーん、こっちへゆらーんと振り回されたんだ。落ちないように必死にしがみついていた夢だ」という。

「そりゃお前さん夢の中でアリンコになって体から出ていってしまったんだよ。ずっと様子を見ていたが、そりゃあもう目をまんまるにして必死に猫じゃらしに捕まっていたんだ。怖かっただろうね」

「恐ろしい、俺はアリンコになってしまったのか。いつ何が起きるかわからないから、アリンコ一つも踏むことが出来ないな」と、それ以来乱暴な男は恐る恐る歩く丁寧な人になったんだってさ。

 

やまんばのお話(すみれグループ)

昔々山の中の村に住んでいたおじさんが村のみんなから「魚を買ってきてほしい」と頼まれて、山を3つ超えた海の村まで買い物に行ったんだ。

村の人から「山には山姥(やまんば)が出るから気をつけろよ」と言われて、おじさんはドキドキしながら山を2つ超えたんだ。

「何だ山姥なんか出ないじゃないか」と安心して最後の山を超えたとき、目の前に海の村が見えてきてとっても安心したんだ。

海の村でたくさんの魚を買い込み、馬につないだ荷車いっぱいに魚を載せてさあ帰ろうと思ったところ、海の村の人からこう言われたんだ。

「あの山には山姥がいるから気をつけてな。いざとなったら荷物を捨てて逃げるんだよ。さもなくば取って食われてしまうからな」と。

山のおじさんは怖くなって、1つ目の山をドキドキしながら登っていったんだ。ところが山姥が出てくる様子も無かったんだ。「な~んだ、海の村の人も山の村の人もみんな驚かすからどうしたもんかと思ってドキドキしていたけど、山姥なんか出てこないじゃないか」とのんきに二つ目の山に近づいていったんだ。

2つ目の山に入ってしばらくすると、後ろの方から「ドッドッドッドッ」と足音がしてきたんだ。ドキッとしておじさんが後ろをふり返ると、髪が真っ白で真っ赤な口が耳まで裂けている山姥がおじさんの方に走ってきたんだ。そして、「おい!そこの男!その荷車に乗っている魚を置いていけ!さもないとお前を食っちまうぞ!」と恐ろしい声で叫んだんだ。

おじさんは怖くなって、荷車の魚を捨てて大急ぎで逃げたんだ。後ろでは山姥が魚を「バリッバリッバリッバリッ」と食べている音が聞こえてきたんだ。

2つ目の山のてっぺんにたどり着くとおじさんは一安心して、「これで山姥も追いかけてこないだろう。あー怖かった。」と安心していたんだけど、すぐに後ろから「ドッドッドッドッ」とまた足音が聞こえてきて、山姥がこういったんだ。

「おい!男!さっきの魚じゃ全然足りない!その馬をおいていけ!さもないとお前を食っちまうぞ!」と恐ろしい声で叫んだんだ。

おじさんは怖くなって、馬の脚を半分チョキンと切って馬を引っ張って逃げていったんだ。後ろでは山姥が「バリッバリッバリッバリッ」と馬を食べている音が聞こえてきたんだ。

はぁはぁいいながら3つ目の山まで来たおじさんは「流石にもう山姥は来ないだろう。しかし恐ろしいこともあるものだ」といって休んでいたら、またまたうしろから「ドッドッドッドッ」と足音が聞こえてきて、山姥がこういったんだ。

「おい!男!さっきの馬じゃ全然足りない!その馬全部おいていけ!さもないとお前を食っちまうぞ!」と恐ろしい声で叫んだんだ。

おじさんは残った馬をほっぽらかして、一人で一生懸命逃げていったんだ。後ろでは山姥が馬を頭から「バリッバリッバリッバリッ」と食べている音が聞こえてきたんだ。

 

このままではいつか山姥に食べられてしまうと思って、おじさんは3つ目の山のてっぺんにある湖の近くで高い木の上に登って隠れていたんだ。

しばらくすると後ろから「ドッドッドッドッ」と足音が聞こえてきて、山姥がこう言ったんだ。

「おい!男!あんな魚とあんな馬じゃ全然足りない!お前を食ってやるから出てこい!どこに隠れても見つけてやるからな!」と恐ろしい声で叫んだんだ。

おじさんは怖くなって木の上で隠れていたんだけど、湖の周りを山姥がぐるぐる回っておじさんを探し始めたんだ。

山姥が湖をぐるりと回って男の近くに来た時に「男!そんなところに隠れていたのか!」と山姥が叫んだんだ。怖くなったおじさんはブルブル震えて隠れていたんだけど、次の瞬間「ぼっちゃーーん」と大きな音を立てて山姥が湖に飛び込んだんだ。山姥は湖に写ったおじさんの影に向かって飛び込んで、溺れて死んじゃったんだって。

 

虎とタニシの競争(たんぽぽグループ)

日本には虎がいなくなった理由があるんだって。

昔の日本には虎がたくさんいたんだ。でもある時を境に虎が日本からいなくなったんだよ。

ある日虎が池の周りを歩いていたら、のっそのっそと歩くタニシを見つけたんだ。

「君は本当に歩くのが遅いなぁ。この池の端から端まで行くのに一日じゃ足りないんじゃないのか」と虎がタニシをバカにしたんだ。すると、

「何を言っているんだい、僕は実はとっても歩くのが早いんだよ。君なんかよりもずっと早いよ」と今度はタニシが虎を馬鹿にしたんだ。

頭にきた虎はタニシに向かって「そこまで言うならこの池からあの一本松まで競争しようじゃないか」といいだして、虎とタニシの競争が始まったんだ。

「よーいドン!」

合図がなると、虎はものすごいスピードで一本松までかけていったんだ。でも、実はタニシは虎のしっぽにひっついていて、何もしないままあっという間に一本松のところまで行ったんだ。

虎がくるっと振り返ってタニシがいないとわかると「何だ、やっぱりタニシはのろまじゃないか」と笑っていると、後ろの一本松から「虎さん、ずいぶん遅かったじゃないか。僕はもうとっくに一本松についていたよ」とニヤニヤ笑っていました。

実はタニシは虎が一本松でくるっと振り返った時にぴょーんと一本松に飛び移ったんだね。虎はタニシにかけっこで負けたことが恥ずかしくて、日本からいなくなったというお話だよ。

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