2023年6月12日の素話(のっぺらぼう・三枚のお札)

目次

ストーリーからイメージすることを意識してお話を選んでみました。

のっぺらぼう(たんぽぽグループ)

少しだけ現代版に変えてみました。

新しい街に行くときは何がどんなところにあるのかその街の人に聞くのがいいよ。ということで、はじめてこの街に来た男の人は、街にいたおじさんに聞いてみました。

「おじさん、この街には何かいいところがあるかい?」

「そうだね、海の近くに大きな一本の松があるから、そこに行ってみるといいよ」と言われたので、その男の人は海の方へ行きました。

松の木のそばには一人の女の人が立っていました。海の方を向いていたので後ろ姿しかわかりませんが、どうもきれいな女の人のようです。男の人は「ねぇねぇ」とその女の人に声をかけてみました。

すると女の人は振り返ったのですが、その顔を見てびっくり!男の人は腰を抜かしてしまいました。

なんと、女の人は目も鼻も口もないのっぺらぼうだったのです。

 

という感じで何となくイメージしやすい情報だけに絞り込んで、わかりやすく伝えてみました。今日はすんなりと入っていったようで子どもたちも楽しんでくれました。

次々と現れるのっぺらぼうに子どもたちも段々と引き込まれていき、はじめは食後のぼんやりした表情だった子どもが目を見開いて聞き入っていたり、「来るかも来るかも!?」と予想できる子は、お決まりの「それってこんな顔だったかい?」が出てくると満足そうに聞いていたりと、とても楽しんでくれたようでした。

 

三枚のお札(すみれグループ)

「お父さんやお母さんからお使いを頼まれたことある人~?」と聞くと、何人かが手を上げて「◯◯したことがある」と話をしたそうな顔をしていました。何名か我慢できずに話しだした子どももいました。

「そうなんだね。昔から、お使いってのは子どもがすることになっていて、昔もいろんなお使いがあったんだよ。山の中のお寺に住んでいた小僧さんは、和尚さんから色んなお使いを頼まれていたんだ。例えば待ちに買い物に行ったり、山に山菜を取りに行ったりって感じでね。今日も和尚さんからお使いを頼まれた小僧さん、山の真ん中にある山菜を取りに行くことにしたんだ」

和尚さんは「山の真ん中に美味しい山菜がたくさん生えているんだ。でもな、あの山には山姥がおるからな、山姥に出会ったらすぐに逃げるんじゃぞ」といって小僧にしっかりと教えました。それでも小僧のことが心配だった和尚さん、小僧に3枚のお札を持たせて「何かあったらこの御札に願い事を言って投げるんじゃ」といい、小僧を山に向かわせました。

小僧は和尚さんの言いつけを守って、山姥に出会ったらすぐに逃げようと思っていました。ところが山の真ん中に行くと、そこには美味しそうな山菜がアチラコチラにたくさん生えていて、夢中で山菜摘みをしてしまいました。ふと気がつくとあたりは真っ暗。これは困ったどうしようと頭を抱えていると、向こうの方から優しそうなおばあさんが近づいてきました。

「小僧さん、こんな夜更けにこんな所で何してるんだい?」

「山菜を採っていたら夢中になりすぎてこんな時間になってしまったんです」

「今日はもう遅いし、危ないからうちに泊まっていきなよ。美味しい山菜汁を作ってやるから。明日の朝になったらお寺に帰ればええ」ととても優しくしてくれました。小僧さんも安心してそのおばあさんの家に行き、美味しい山菜汁をたくさん頂いてフカフカのお布団で眠らせてもらいました。

真夜中に小僧さん、おしっこがしたくなり目を覚ましました。そしてふと耳を澄ますと、隣の部屋から「シャー、シャー、シャー、シャー」という変な音が聞こえてきます。それどころか「ヒッヒッヒッ、うまそうな子どもが手に入ったわい」としゃがれた声も聞こえてきます。

 

という感じで、山姥が本性を表すのですが、このあたりから怖い話が苦手な子どもたちもしっかりと聞いてくれて、どうなるんだろう?という表情をしてくれました。

もちろん今の子ども達は「山姥」を見たこともないでしょうし(私もありません)、どんな表情なのか、どんな服を着ているのかなどもイメージできないのかもしれません。一人ひとり違う姿をイメージしているのだと思います。それで良いと思います。それでも話の流れを想像したり、頭の中にイメージをふくらませる経験をたくさんすることで段々と想像する力を身につけていくのだと思います。

 

想像する力が相手を思いやる力につながるように

イメージする力が十分身についている子どもは、「そんなふうにしたら◯◯はどう思うかな?」と言われると「◯◯」の気持ちになって考えることができるようになります。成長につれて相手のことを考えた言動をすることが自然になり、4歳後半ごろには誰かに言われなくても「これをしたら◯◯やどんな思いをするか?」を考える力が身につく子が増えてきます。一方で相手のことを考えることができるようになっても、「相手の気持ちを考慮した行動」には繋がらないこともまだまだ多いのがこの年齢の子どもたちです。やはり我慢して相手に譲るとか難しいですからね。

自分の気持ちだけでなく、相手の気持ちがあることに気づき、その相手の気持ちを想像できてはじめて、「自分の気持ち」と「相手の気持ち」を比べたり譲ったり押し通したりを使い分けられるようになります。その状態になるまでに、色々な想像する経験を積むことが大切です。

できることならば「インプット」の情報量を少なくしてあげると良いです。例えば動画を見せるよりも絵本を読んであげる、絵本を読んであげるよりも素話をしてあげる。

さらに「アウトプット」を自由にさせてあげると良いと思います。塗り絵よりも落書きでもいいので自由に絵を描かせてあげる、形を作るブロックよりも同じ形の積み木を組み合わせてなにか形を作るなど、一つの答えに繋がらない「アウトプット」ができるようにしてあげると良いと思います。

様々な想像をする経験が、人を思いやり、人とうまく関わっていくための力として身についていくと信じています。

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