そう言ってくれて嬉しいな

子どもの中には「◯◯はね・・・」「◯◯はこの前ね・・・」と自分の話ばかりする子がいます。自分の話を聞いてもらえることは、その子にとって自己肯定感が高まる経験なので可能な限り話を聞きます。

ところが、他の子が話しているにも関わらず自分の話を始めたり、他の子が嫌がっているにも関わらず、自分がしたいことだけをしているときには、少し考えてほしいと思って声をかけることがあります。

「そんな言い方をされたら相手の子はどう思うかな?」や「そういうことをしたら相手は嫌な気持ちになるんじゃない?」と声をかけてもなかなかピンとこない子もいます。これは他人の気持ちを感じる経験が少ないのかな?と感じたときには違ったアプローチをしています。

他の子が私に「◯◯出来てすごい楽しかった!」と話してくれたので「そうなん!そう言ってくれたらめっちゃ嬉しい!」とピンときていない子の隣で私が言い、「聞いた人が嬉しくなる言葉を使うとすごく気持ちいいね!」と他人の気持ちと自分の気持ちを両方わかりやすい形で伝えてみました。これにはピンときていない子も何か感じるものがあったようです。

大人からすれば「こんな言い方をすれば相手が傷つくかも」と立ち止まって考えたり、「もうちょっと言い方ってもんがあるんじゃないの!」と憤慨したりすることはよくあることです。ところが子どもの中には経験が少なくそのような発送にならない子がいます。

相手の気持ちが考えられないのはもしかしたら「経験不足」なだけかもしれません。意識的に経験させてあげることで、相手の気持ちを考える力が身についていきます。周りの大人がサポートしてあげることが大切ですね。

意識することが「経験」の前提

こんな実験があります。屋外で5秒間周りを見回して目を閉じます。被験者は「目を閉じたまま【自分が見えた赤いもの】をできるだけたくさん思い出して下さい」と言われると、ほとんど思い出せない人とたくさん思い出せる人に分かれます。

次に「5秒間で周りの赤いものを探して目を閉じて下さい」と言われると、先程よりも多くの赤いものを探し出せます。ところが「そのまま目を閉じたまま【黄色いもの】を思い出して下さい」と言われると、ほとんど思い出せないそうです。

この実験から人は無意識では非常に多くの情報を取り入れているが、その中で情報を残しておけるのは「意識しているものの一部だけ」ということがわかります。

「相手の気持ちが分かる子になってほしい」と大人が思うのであれば、「相手の気持ちに気づくこと」を意識することから始める必要があります。意識していないことはそもそも見えないし感じないのです。見えないし感じなければ経験もできないのです。

もちろん言ってすぐにできるものではありませんし、継続しないと力が身につかないので、どうやって継続できるようにするかなどもとても興味深いなぁと感じるのです。

本当に、保育や子育て・人育てというのは奥が深いです。