2013年5月20日 第37号 -おいしく・たのしく・マナーよく-
新緑が美しい季節です。園庭では子どもたちの遊び声があちこちで飛び交っています。外遊びが一段とはずんでくると、食欲も活発になります。
「食育」という言葉が登場したのは、もう10年も前のことですが、外食産業が盛んになり、刺激的な味のスナック菓子があふれて、子どもの食欲がいびつになるのが危惧されました。「食育基本法」という法律までできました。
家庭の食卓は食事の楽しみと家族のきずなを支える大切な場ですが、保育園の昼食もこどもたちにとって友だち同士のつながりの中で楽しく食べることを大切にしたいと考えています。「食育」というと栄養教育でもやりそうなニュアンスがありますが、大事なのは子どもたちが健やかな食欲で幅広い味覚を楽しめるように育つことです。
食欲と栄養バランスがまず大切なのですが、食べるということは、幅広い味覚で色々な食材を楽しめることや、人との楽しい絆の場という文化的な要素をもっていて、こちらも大切にしていきたいものです。
保育園では、できるだけよい素材を使った、栄養バランスのよい手作りの食事やおやつを給食の先生たちが毎日頑張って作っています。
毎月1回、主任やクラス担任を交えて、給食の先生たちと「食育会議」をして、献立や子どもたちへの食育の進め方を検討します。
色々な料理を味わい分ける味覚が育つためには、素材の持ち味をいかしたうす味気味の味付けも大事で、汁物の出汁は昆布やカツオの天然出汁を使うようにしています。
卵は小野のしんあい農園から、昔ながらの地面の上で放育されている鶏の産んだ新鮮な卵を配達してもらっています。
おかずもおやつもできる限り冷凍食品を使わないよう配慮し、手作りを心がけています。
食事の場は、0歳のばら組、1歳のゆり組は落ち着いて食べられるように、お部屋でとります。2歳以上のもも組からはランチルーム(ホール)です。ほし組、つき組は3~5歳の小グループ(4~5人)ごとにテーブルを囲みます。4歳児、5歳児になると、自分で好みの分量を盛り付けるバイキング方式です。
この方式を始めた当初は、せっかくバランスよく手をかけて作った食事が子どもの好みに任せては偏った取り方になって、身にならないのではないか心配だという声がきかれました。
しかし、初め偏りがあったとしても、自分の好みや選択が尊重され受け入れられることで、食事に向き合う心の元気が出てくるのだと考えています。
子どもは誰でも大人が思っている以上に、親や先生から褒められるよい子でいたいと切望しているものです。たとえば嫌いなトマトも食べたほうが良いことは百も承知なのですが、無理に押しつけられたり、叱られるのでは、気持ちはめげて、ひいては食事そのものが苦痛になりかねません。トマトが食べられるようになるには、まず嫌いだという自分が認めてもらえる段階が大切です。「嫌いでもいいんだ」と安心してやっと「ウーン、ちょっと食べてみようかな」という好奇心や友達に負けたくない競争心などの意欲が生まれるのです。
また、菜園やプランターで野菜を植えたり、収穫する菜園活動やクッキング保育で自分たちで作って食べる経験を通して、自然に嫌いな物も食べられるようになっていきます。
自分の意志で食べることができて初めてそれが食べる楽しさ、嬉しさ、ひいては自信になるのだと思います。小さいときから自分を認め信じる力を持てた子は幸せです。保育園の食卓は、子どもたちがそういう力を養いながら、お互いを認めあって囲む、楽しくなごやかな場でありたいと考えています。そのためには、食べる姿勢や友だちを不快にさせない必要限度のマナーも必要です。
「おいしく」「たのしく」「マナーよく」の3つの方針のもとで、子どもたちの命と元気に直結する食事をこれからも大切にしていこうと思います。
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