2008年5月8日 第26号 担当制と異年齢保育
こいのぼりが泳ぎ、冒険の森に藤の花が咲いて、1年で最も緑が輝く季節になりました。
五月に入り園内も随分と落着いた雰囲気になりました。
この4月には例年になく職員の入れ替わりが多く、保護者の中には心配や不安をもたれた方もおられたのではないかと思います。退職した職員たちにはそれぞれに事情があって、園にとっても大変残念なことでした。
ですが、新たに職員となった人たちを加え、姫井保育園ならではの保育をさらに前進させ、子どもたちのためにより良い保育をめざそうと、職員全員で思いを新たにしているところです。
姫井保育園ならではの保育とは?と聞かれれば次のように答えることができます。
乳児期には何よりも子どもの安心と先生との信頼関係を大切に、生きる力の基礎を育て、3歳あたりからの幼児期になったら子ども同士のかかわりの中で自立的に活動できる力を育てる保育を目指しています。
そしてそのように育っている子どもは何歳であろうととてもきげんがいいものです。
それでうちの園では保育目標として「きげんのいい子どもに」をかかげていますが、今回は少し具体的に保育の姿についてお話してみようと思います。
0・1・2歳児の保育と「担当制」
この年齢の小さな子どもたちのクラスでは、安心と信頼を育むために食事の時に「担当制」をとっています。
0歳児は先生と子どもが1対1で1歳児は3~4人、2歳児は6~7人のグループに担当の先生を決めて、いつも同じ先生から食事の世話をしてもらう形をとっています。
年齢が下がるほど食事は生活の中での大きな活動で、また楽しみでもあります。いつも同じ先生から食べさせてもらうことは子どもの気持ちをとても安定させます。また先生も少人数の同じ子どもたちを見守る中で、ひとりひとりの、言葉にできない要求や不安を察して、分かってあげることができます。
いつもは自分でスプーンを持って食べられる子が「食べさせて」といった時、それも言えずただ座っているだけの時に、「そういえばお母さんが熱を出して、今朝はおばあちゃんと一緒に登園したんだっけ」と思い当たったり、あるいは「さっきお友だちとオモチャの取り合いでケンカになり、まだ気持ちが立ち直っていないのかな」と子どもの気持ちに寄り添ってみてあげることができます。
「そうか~、今日は食べさせてほしいんだね」と言ったあと、「じゃあ先生が今日は食べさせてあげようね」と言うか、「○○チャンなら大丈夫、自分で食べられから見ててあげよう」と励ましてあげるかは、その子をいつも見守って世話している先生しか判断できない、微妙なところです。
子どもは先生が自分の気持ちを受け止め、それを言葉にして返してくれ、また、助けたり支えたりしてくれることで、先生に対して安心と信頼を覚えます。
こうして安心と信頼を持って初めて、子どもたちも先生の言うことを聞いてくれるようになり、きちんとした生活習慣を身につけ、きげんよく遊ぶことができるようになるのです。
この年齢のクラスでは進級する際に、複数担任のうち必ず1人は、子どもたちと一緒に持ち上がるようにしています。
これもなじみの先生が付くことで子どもたちが安心して新しい環境に入れるよう、またそれまでの子どもの育ちを知った上で子どもたちをリードしていける先生が必要だからです。
3歳・4歳・5歳の異年齢保育
3歳からの幼児クラスになると、子どもは集団の中で遊ぶ楽しさを求めるようになります。ところが地域社会からは、昔のような子ども同士が群れになって遊ぶ異年齢集団が消え、兄弟数も少なくなっています。今、友だちとのかかわりを身につける機会は保育園や幼稚園でしか見出せなくなっています。
当園で、幼児クラスを3年齢合同の異年齢保育にしているのは、子どもが友だちとの多様で豊かなかかわりを持ってほしいと考えたからです。優しさや賢さ、たくましさを自然な形で学んで、社会の中で生きていく力の土台を養うこと。このことが、この時期の子どもたちには何より大切です。
異年齢クラスでは、上の子は下の子をいたわり世話をしたり、自分の知っていることを得意になって教えたりする中で、自分自身を育てています。
たとえば、一生懸命積み上げた積み木の塔が下の子にガラガラと崩されてしまうことがあります。そんな時、一瞬カッとして口惜しそうな顔になっても「ええよ。また作るけぇ~。」「今度は壊したらいけんよ。」と自分の感情をコントロールしたり、優しく注意したりと、今までのその子だったら思いもよらない物言いにびっくりすることがあります。
上の子は下の子にかかわることで、自分の成長や下の子への責任を知り、自然に思いやりを身につけていきます。下の子はそんな先輩がとても魅力的な存在に思えて、年上の子に認められたくて自発的に努力します。それはたいていの場合成功して、子どもにとても自信と喜びを生み出しているのです。
もちろん、年齢に見合う発達課題があり、同年齢の間での自由な競争や対等な協力も見逃せません。そのため、クラスをまたぐ同年齢グループ(3歳:つくし、4歳:たんぽぽ、5歳:すみれ)を作っていて、このグループ活動をおりまぜる形をとっています。これも子どもたちには新鮮で、そこで張り切る姿はとても活力があります。
このような保育の中で私たちも教えられることが多く、子どもと一緒に育ち合う毎日のような気がします。
「子育てに王道なし」とはよく言われますが、まったく「保育にも王道なし」と思います。
子どもたちのより良い育ちのために何ができるのか、職員一同、何よりも保護者の皆様と手をたずさえ、共に考えながらこの1年も頑張っていきますので、よろしくお願い致します。
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