2月3日の素話(三匹ヤギのがらがらどん、まんじゅうこわい)
今回は少し長めのお話に挑戦してみました。
子どもたちの様子に合わせてストーリーを変えずに表現を簡単にしたり、一部端折ったりする部分がありますが、子どもたちがお話を聞いているその瞬間を楽しめることが大切だと思いますので、ご家庭で試されるときにも細かいところは気にせず、お子さんと一緒にお話の世界を楽しんでもらえたらと思います。
つくしグループ向け 三匹ヤギのがらがらどん
昔三匹のヤギがいました。なまえはどれもがらがらどんと言いました。ある時山の草場でご飯を食べてこようと思って、山に登っていきました。
登る途中で、大きな橋を渡らなければいけないのですが、橋の下には気味の悪い大きなトロルが住んでいました。グリグリ目玉は皿のよう、突き出た鼻は火かき棒のようでした。
さてはじめに一番小さいヤギのがらがらどんが橋を渡りにやってきました。カタコト、カタコトと橋が鳴りました。
「誰だ、俺の橋をカタコトさせるのは」とトロルが怒鳴りました。
「何、僕ですよ。一番チビヤギのがらがらどんです。山へ草を食べに行って太りに行くところです」とそのヤギはとても小さい声で言いました。
「ようし、ならば貴様を一飲みにしてやろう」とトロルが言いました。
一番チビヤギのがらがらどんは「どうか食べないでください、少し待てば僕よりも大きな二番目のヤギのがらがらどんがやってきますから」とお願いすると、トロルは「そうか分かった、じゃあさっさと行けばいい」と言いました。
しばらくして二番目のヤギのがらがらどんが橋を渡りにやってきました。ガタゴトガタゴトと橋が鳴りました。
「誰だ俺の橋をガタゴトさせるのは」とトロルが怒鳴りました。
「僕は二番目のヤギのがらがらどん。山へ草を食べに行って太りに行くところです」とそのヤギは言いました。前のヤギよりは大きな声でした。
「ようし、ならば貴様を一飲みにしてやろう」とトロルが言いました。
二番目のヤギのがらがらどんは「どうか食べないでください、少し待てば僕よりも大きな三番目のがらがらどんがやってきますから」とお願いすると、トロルは「そうか分かった、じゃあさっさと行けばいい」と言いました。
ところが、その時もうやってきたのが大きいヤギのがらがらどん。ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン、ガタン、ゴトンと橋が鳴りました。あんまりヤギが重いので、橋がきしんだり唸ったりしました。
「一体全体何者だ、俺の橋をがたぴしさせるのは」とトロルが怒鳴りました。
「俺だ!大きいヤギのがらがらどんだ」とヤギは言いました。それはひどくしゃがれたガラガラ声でした。
「ようし、それでは貴様を一飲みにしてやろう」とトロルが怒鳴りました。すると「さあこい、こっちな角が二本ある、これで目玉を串刺しにしてやる。おまけに大きな蹄もあるぞ。肉も骨も粉々に砕いてやる」大きいヤギのがらがらどんがこう言って、トロルに飛びかかると、角で目玉を串刺しにして、蹄で肉も骨も木っ端微塵にして、トロルを川に突き落としました。
こうしてヤギたちはゆっくりと山で草を食べてまるまると太って帰ったそうです。
すみれ・たんぽぽグループ向け まんじゅうこわい
もともとは落語の定番ですが、子どもたちはオチを楽しむというよりも、一つ一つの表現を楽しんでくれたようです。
すみれグループの子どもたちはオチの意味がわかったようですが、たんぽぽグループの子どもたちはまだ難しかったように感じます。話す方も試行錯誤しながら楽しみたいと思います。
今回は子どもたちに話した内容にできるだけ近づけて台本を書いてみたいと思います。ご家庭で試されるときの参考になれば幸いです。
導入
今日の豆まき会でみんなはしっかりと鬼に豆をぶつけることができた?泣いた人はいなかった?やっぱり鬼は怖かった?
(子どもたちは口々に今日の豆まき会の感想を教えてくれます)
鬼が怖い人もいたみたいだね、実はね、大人になっても怖いものがあるんだって。今日はね、4人の男の人達が「自分の怖いもの」について話をしてたんだ。そんなお話。
本編
昔ね、4人の男の人達が怖いものがあるか?って話をしてたんだ。
まず最初の人がね、「僕は実は、鬼が怖いんだ。だって、鬼って顔も体も赤かったり青かったりするだろ?変じゃない?しかも髪の毛はもじゃもじゃだし・・・」
それを聞いた他の人はこう言ったんだ。「鬼なんか豆をぶつけてしまえばどっかに行ってしまうだから、全然怖くないよ」
「じゃあ、君が怖いのは何だい?」と聞くと、2人目の人がこう言ったんだ。
「僕は特に怖いものはないけど、あえて言うなら、蛇が怖いんだ。だってさ、蛇って頭が三角形みたいになってるだろ?ニョロニョロ動くだろ?下をペロペロ出すだろ?変じゃないか?」
それを聞いた他の人は、「蛇なんか怖くないさ、あんなものつかまえてくるくるっと首に巻きつけてしまえば良いんだよ」とバカにしてきました。
「それじゃあ、君が怖いものはあるのかい?」と聞かれると、3番めの人がこう言いました。
「いや、怖いものは特に無いんだけど、あえて言うなら、アリが怖いかなぁ。だってさ、アリってこーんなにちっちゃいのに、めちゃくちゃ大きな顎があるだろ?あれで自分よりも重たいものを軽々と運んでしまうんだ。しかも1匹だけでなくてうじゃうじゃ一緒にいるだろ?あんな怖いものはないよ」
それまでじっと聞いていた4人目の人が、みんなのことをバカにしながら「みんな変なものが怖いんだね。あんなものは怖くもなんとも無いさ」と言ってきました。
それを聞いて、3人の人が、「じゃあ君が怖いものはなんだい?」と聞くと、4人目の人は
「僕は怖いものなんか無いよ。でもあえて言うなら、おまんじゅうかな。知ってるかい?おまんじゅうってさ、丸くってさ、割ったら中にあま~いあんこが入っててさ、それを食べたら口の中にベチャベチャくっついてさ、いやー、ほんと怖い」と言いました。
バカにされた3人はちょっと仕返ししてやろうと思って、その日の夜、おまんじゅうが怖いと言った人の家に忍び込んで、こっそりとおまんじゅうを投げ込みました。
布団の中からは「うわー!おまんじゅうだ!(もぐもぐ)、やめてくれー!甘い甘い(もぐもぐ)」と不思議な声が聞こえてきました。
様子が変だったので、3人は中に入って見てみると、美味しそうにおまんじゅうを食べている男の人がいました。
「何だ、君はおまんじゅうが怖いって嘘をついたんだね。君が本当に怖いものは何なのさ?」と聞くと、嘘をついた人は、「今は温かいお茶が怖いなぁ」
耳から入る情報の残り方
一度だけですが、寄席に行って落語を見たことがあります。落語のCDを借りてきて、古典落語を聞いたこともありますが、噺家さんの技術を知ると圧倒されます。
ついつい話に引き込まれて、いつの間にか自分の目の前で本当に起きているような情景が頭の中に浮かびます。
目で感じる情報はとても強烈で、短期間は印象にも残るのですが、耳で感じる情報は自分の頭の中で整理する(映像化する)過程が入るので、一度頭の中に映像化されると長く頭の中に記憶されます。
経験のある方もいるかと思いますが、思い出の曲を聞くとその曲をよく聞いていた時代の様々な思い出も一緒に思い出したりするものです。
子どもたちにも日頃はテレビなどから視覚刺激をたくさん受けていると思いますので、たまには耳からだけの刺激を経験するのも良いのではないかと思います。
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