2010年5月17日 第31号 保育園で育つもの

2019年5月27日

新年度がスタートして一月余り経ちました。保育園が初めてのお子さんは、家庭との違いに戸惑い、またお母さんと離れる辛さもあって、保育園になじむことが子どもとしての大仕事だったことでしょう。

その負荷を乗り越えて、それぞれに慣れとたくましさが見られ、私達も毎年のことながら、ほっとするのがこの時期です。

保育園では一人ひとりの子どもが、子ども「たち」になります。それは担任の先生にとって、もちろんそうなのですが、子ども自身にとっても、同じ年齢の仲間に囲まれていて、ぼくたち、わたしたちのひとりとしての自分です。

当園では年少児から年長児まで、3年齢合同のクラス(つき組、ほし組)になりますから、そうなると、年上との関係、年下との関係も合わさってきて、否応なく小さいながら社会関係の真っ只中に入ることになります。同年齢間だけでなく、異年齢間のふれあいを通じて、子どもたちが豊かな社会性を自然に養うことを目指しています。

ところで、社会性とは他人と関わる力です。そして他人は自分の思うようにならない存在です。子どもは遊びの中で仲間とぶつかり合い、さまざまな葛藤に見舞われながら、人と関わる振舞い方を身につけて行きます。ケンカも我慢と自己主張のバランスを見つける機会です。また、協力や助け合いは共感の充実感を味わせてくれます。

社会性が育つ場は、かつて地域の空き地などに子どもたちが群れ集っていた時代には、ごく自然に子ども社会として成り立っていたものでした。しかし経済成長の中で空き地がビルの敷地や駐車場になり、場が消えると子ども社会も消えて行きました。また、地域の子ども社会は大きい子が小さい子をリードしてたくましい遊び方をしていました。同年齢同士での競争や話し合いの関係だけでなく、年少児が小学校に上がるまでの間に、上の子のリードを受け入れて折り合う力から、下の子を思いやりつつリードする力まで自然に身につけるレールが成り立っていました。

そうした子ども集団は自然にできながら、他方では地域の絆がしっかりと見守っていて、いたずらや危険なこと、弱いものいじめに対してたしなめる大人たちがいたものです。

今、子どもたちが遊び合い、育ち合う場は保育園か幼稚園になりました。保育園はかつてあった子どもたちの育ち合いを、今の時代に組み立て直して実現している場と言えるかもしれません。小学校に上がった時に勉強ができるようになることはもちろん大切ですが、英語が話せても友達とのコミュニケーションがうまくとれない、すぐキレて怒る、漢字が書けても人の気持がわからないといった子どもにならないよう、私たち保育者が人と関わり合う力を意識的に育てていかなければいけない時代になりました。

集団保育で気をつけなければいけないことが一つあります。それは保育園では、嫌になったり疲れたりしたとき、家に帰って親に甘え気持ちを立て直すことができない点です。子どもはきげんがいいときは外に打って出る元気な存在ですが、疲れた時には甘えて気持ちをいやし、元気を取り戻す場所がなければなりません。

だからクラスの先生たちは、こうした心の動きを察して子どもの甘えを受け止め、温かく包むことが必要になってきます。反対に元気な子どもたちの中では、先生は心弾む遊びにチャレンジさせる力強いリーダーや、サポーターになることが必要で、最近よく言われる「保育の専門性」とはこの両面のバランスにあります。

それにもまして大切なのは家庭の慈しみです。子どもの心の元気さを奥底で支えているのは、肉親の保護者に愛されているという実感と自信のように思われます。赤ちゃんが生まれてお兄ちゃん、お姉ちゃんになろうとする子どもが、一時期「赤ちゃん返り」と呼ばれる、きげんのバランスを崩すことがよくあります。ほとんどはご家庭の努力でそのうち回復することですが、私たち保育者が親子関係の大事さを痛感するケースです。

子どもを支え育てることは、大人にとって本当にやりがいのある営みだと思います。ご家庭、保育園それぞれの立場でベストを尽くして行きたいと思います。

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