2004年8月3日 第16号 「かみつき」について

2019年5月27日

台風が運んできた雨で一息つきましたが、この夏は例年になく猛暑で、園庭は子どもたちの水遊びの歓声で連日大賑わいです。

つき、ほし組の幼児クラスだけでなく、ばら、ゆり、もも組の小さな子どもたちも、水遊びが好きな子が多く、お部屋に入る時間がきても水から離れがたくてむくれてしまうこともしばしばです。

小さなクラスの子どもたちも、担任や園生活のリズムに慣れるにしたがって、ずいぶんと落ち着いて過ごせるようになってきました。その反面、遊ぶ時には活発に自己主張し合う場面も増えてきて、おもちゃなど物のとりあいや座る場所の奪いあいでトラブルになることがよくあります。

言葉で思うことを口にできない1、2歳児では時に押し合いや叩き合い、またかみつきやひっかきなど体で直接向かっていく行動になりがちです。

特にかみつきはくっきりと歯形が数日残ることからも、かまれた子どもの保護者の方にはショックが大きく、しかも2回、3回と続いた時には本当に心が痛む思いで、さぞかし腹も立つことだろうと、私たち職員もお詫びをいいながら辛い思いをしています。

また、かんだ子の保護者の方にはさらにいたたまれない思いでおられることを考えると、園としても何とかかみつきをなくすために、出来うる限りの最善の手だてをしていかなければと努力しているところです。保育のありようや、園生活の流れの見直し、かみつきの起こりやすい時間帯には手すきの職員がフォローに入ったり、と何度も職員間で話し合いを持ち工夫してきました。

先日から始まった低年齢児室の増築も、定員増に対応するだけでなく、よりゆったりした環境にすることで、子どもたちがくつろげるようにするのが大きな眼目です。

1歳前半から芽生えた自我は1歳後半から2歳にかけて大きくなり、「じぶんで」「じぶんが」と何でもひとりでやりたがったり、何でもひとり占めして自分の物にしたがったりします。見かねておとなが手を出すとそれが気に入らなくて、最後にはひっくり返って泣き出し、おおじらで手がつかないといった光景がおうちでも見られることがあるのではないでしょうか。

成長の一段階とはわかっていても、「赤ちゃんのときにはあんなに可愛かったのに…」とため息がでそうな、大人にとっては、なかなかやっかいで手ごわいこの時期です。

ついついここでしつけなければと叱ることが多くなりがちですが、生まれたばかりのこの小さな自我がまっすぐ育つためには、大人から無理矢理おさえつけられたり、無視されたりするのではなく、認められ、受け止められながら社会のルールという枠組の中で生きていくことを学ぶことがとても大切な時期だと考えています。

かみつきにしても、頭ごなしに叱って納まる場合よりも、叱られたことでさらにひどくかむようになることのほうが多いように思います。すれちがいざまに何の理由もなくかんだように思えても、その前に自分よりも力の強い子におもちゃをとられて、くやしくて気持のもって行き場がなく、ついそばにいた子にかみついてしまった、かみついてはいけないと分かっていてもまだセルフコントロールができず、かんだあとでいけないことをしたらしいと気がつくのです。

ひとりで3つも4つもおもちゃを抱え込み、他の子がそれをひとつ取ろうとするのでガブっとかんでしまう子もいます。

思わず大人は「1つぐらいなぜ貸してあげられないの?」と裁判官になっておもちゃをとりあげ、かんだ子をただ叱りつけるということになりがちです。

子どもにとっては4つのおもちゃのどれをとってもみな同じく手放せない大事な物でとても一つぐらいとは思えないから、嫌だとなったのです。

「〇〇ちゃんにはどれも大事だったんだね~。そうか~。いけないってわかってても、ついがぶってやっちゃたんだね。」と話しかけて、かんだ子が落着くのを見計らってからこんな風に言ってみます。「△△ちゃんのお手手見てごらん。こんなになっちゃって、くやしくて悲しくて痛いよね。」「今度からはがぶってかまないようにしようね。」

理由の見えにくいかみつきはあっても、理由のないかみつきはないのではと考えています。

かみつかれた子の痛い、辛い、悲しい気持、かみついた子のいらいらした、くやしい気持、どちらにも丁寧に寄り添って子どもたちが言葉にできなかったところを代わって言ってあげることによって、子どもたちの生まれたばかりの自我や人格はほっと安心します。大人から嫌われたのではない、無視されたのではないということが分かって、やっと他の子の痛みや悲しみも受けとめることができるようになるのです。そうやって初めてかかわりあうルールが素直に学べるようになるのだと思います。

自分が尊重された経験の無い子は決して他人を尊重することはできないといわれています。1、2歳児では今日かまれた子が明日は別の子をかんだ、というようなこともよく起こります。

園ではかんだ子、かまれた子の双方の保護者の方に事情をお伝えするようにしていますが、これはお互いに声を掛け合うことで保護者の方々によい関係を作っていただきたいと思って行っていることです。

3歳に入り、言葉を伝え合うことができるようになると、自然にかみつきも少なくなって、幼児クラスではほとんどみられなくなります。

子どもの育ちを見通しながら、保護者の方々同士、園の職員と保護者の方々との信頼関係を土台に、これからもかみつきを無くす努力をしていこうと思います。

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