2001年11月8日 第8号 子どもとテレビ

2019年5月27日

秋が深まってくると、いいお天気の日は虫取りや草すべりなど外遊びが大盛況ですが、雨が降るとしばらく屋内で遊ぶしかなくなります。

外遊びならではの冒険や探索や体当たりのチャレンジができない替わりに、室内遊びでは目や耳や手先をこまやかに働かせながら、物や人にかかわる力が育まれていきます。

友だちと一緒に背丈より高い積み木の塔を作ったり、絵本の世界に浸ってファンタジーを広げたり、ゲーム遊びの中でルールやマナーを学んだり、パズルやブロックが集中力を育てたりしてくれます。

ですから、保育園では室内の遊びコーナーを充実させて、積み木や粘土、ごっこ遊びやゲーム、パズルや絵本など子どもの個性と成長に合わせてそれぞれが好きな遊びに落ち着いて取り組めるよう工夫を重ねてきました。

子どもたちはそれぞれに好きな遊びに取り組みながら、外遊びの全身運動とは違う形で自分を育てていきます。

そしてクラスの先生は体の元気をもてあまし気味の子ども達の中で、努めてゆったりと構えながら、色々な遊び方を工夫したり、一人一人の子どもを視野に入れて、遊べない子どもにはそれとなく声をかけて興味を持てそうな遊びに誘ったり、それぞれに遊んでいるグループへ目配りをしたりと内心は大忙しです。

ただ、テレビ、ビデオのコーナーはありません。室内で落ち着いて過ごすなら、テレビやビデオも良いのではと思われる方もおられるでしょう。子どもを静かに過ごさせる上でこれほど効き目のあるものはなく、数年前までは園でも教育的な番組やビデオに限って見せるなら構わないのでは、という意見もありました。

テレビが乳幼児にどのような影響を与えるのか、今のところはっきり結論の出た研究はされていないのですが、保育者としての観点からいわせていただければ、乳幼児が長い時間テレビを見つづけることには、やはり弊害があるように思います

乳幼児期は自分の手足を使った遊びや、友だちとのふれあい、歌をうたったり絵本を読み聞かせてもらったりといった直接体験を十分にすることで、子どもの体や感覚が育っていくのだと思います。

子どもが遊びを通して育っていくというのは、その遊びが自分から物や友だちに働きかける能動的なものだからです。働きかければ、物でも人でも必ず手応えやリアクションがあります。それに応じて工夫したり、立ち止まったりしながら、また働きかけていく。そういうやり取りの中で子どもは自分自身を育てていきます。テレビにはこうした現実との往復運動がありません。

また、テレビは視聴者に効果的な印象を与えるために、急に音声を大きくしたり画面を明るくしたり、ズームアップや画面の切り替えを頻繁にしたりします。そうした音と映像による強く大きな刺激と様々な情報は、大人には快適な楽しみですが、乳幼児には強すぎて過剰なところがあると言われています。子どものまだ柔らかい脳では、テレビの強い刺激を大量に与えつづけられると、刺激に対する反応のバランスに変調が生じたり、刺激を処理することもできなくなりかねません。まだ記憶に新しい「ポケモン」騒動はその著しい例だといわれています。

そして前日の脳に残ったテレビの刺激が翌朝まで持ち越されて、先生の話が聞けなかったり、突然アニメのヒーローになって友だちを叩くような行動になってくるようにも思われるのです。そういう訳で、育とうとしている子どもの遊びと楽しみはテレビに頼らないものにしようというのが園の基本方針です。

だからといって、家庭でも子どもにテレビを見せないで下さいと、安易に言うつもりはありません。生まれた時からテレビが生活の中に深く入り込んでいる時代です。私達はテレビ無しでは家庭生活が考えられないくらいに、テレビの情報や娯楽に依存した生活を送っています。

でも何を見るのか、どの程度見せるのか、テレビ以外の遊ばせ方も考えながら、テレビと意識的に付き合うようにする余地はあるような気がします。そしてご家庭でテレビについて何か試みられて、こうしたら良かった、悪かったというお話があればぜひお聞かせ下さい。

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